Break the Bias

June, 2021

テックダンスフュージョン集団CONDENSEの第二弾シングル「Break the Bias」のMV制作をコンセプトからCONDENSEとともに作り上げました。 Intel様の提供するAIテクノロジーOpenVINOを活用し、制作プロセスからAIが入り込みテックとダンスの融合を目指した作品です。

Background

Intel×CONDENSE×THINK AND SENSEという3者のコラボレーションから始まったプロジェクトです。

テクノロジーが実現する新しい体験と表現を、追求する取り組みとして、今回重要視した点は表面的な表現の拡張にテクノロジーを活用するのではなく、テクノロジーとパフォーマーが対峙することで、テクノロジーがパフォーマーのクリエイティビティを刺激し、新しいクリエーションを生み出していくような、制作プロセスを目指しました。

 

Concept 

 現在社会においてダイバーシティが声高に叫ばれる反面、デジタルテクノロジーによって大量の情報の奔流に曝され、大量な情報の「消費者」としておかれている現代人は
「見通しの悪い情報の海」の中で、認知や固定概念といったものが大きく捻じ曲げられ、一種の「バイアス」がかかった状態にあるように思います。

AIによる物体認識は大量の学習データをもとに人間の認知に近い推定機を作るというテクノロジーです。
人の用意した学習データによって強化されたAIモデルは、ある種の人間の平均的認知をベースに構築された固定概念であり、「バイアス」であると思われます。

本作品は、Open VINOの物体認識、セグメンテーションという人為的に構築した最先端の色メガネ(バイアス)を通してみた世界と、その目線に対して、パフォーマーが「ダンス」という手法で、AIの認知をあざむくように、コントロールすることで、AIと共闘したパフォーマンスを作り上げます。

先端的な産業で活躍するAIテクノロジーと遊ぶようにパフォーマーが対峙し、一つの表現として昇華することで、現代社会を覆う「バイアス」のあり方を問います。

 

Open VINO

Open VINOはIntelが開発し提供しているAIのシステムです。

本作品ではOpen VINOの物体認識、セグメンテーションと呼ばれる技術を使用しています。

物体認識によって「Person」や「Dog」など個々の物体を識別し、その範囲をセグメンテーションによって切り出すことができます。

映像素材またはリアルタイムのカメラ映像を物体認識に掛け、切り取った物体範囲をTouchDesignerというクリエイションツールに繋ぎこみ表現を作り込む、という制作の流れが本作品で使用したシステム一連の形式となります。

物体認識、セグメンテーションにはOpen VINOが提供している学習モデルを使用し、TouchDesignerへの繋ぎ込みとして「矩形・認識ラベルのみ映像」、「マスクのみ映像」、「解析文字付き映像」、「それら全てを乗せた映像」の4つのレイヤーに分割しました。また、セグメンテーションの色をラベルごとに割り当て、TouchDesigner側でそれぞれの色ごとに違ったエフェクトを乗せることで特定のラベルの範囲にのみエフェクトを掛ける仕組みを制作しました。

上記の仕組みを採用することで、一般的な映像編集とは違いリアルタイム且つ簡単にマスクを切り出して編集することが可能になります。

TouchDesignerで制作したエフェクトと同時にAIの矩形やラベル、マスクも映像に使用するため、ラベルごとに色を固定した映像とは別に矩形やマスクの色を最終的な映像に合わせて表現の調整をしました。

映像ファイルとして書き出したエフェクト付きの映像と、AIから書き出した矩形やマスクの映像を複合的にコラージュすることで本作品のような仕上がりになりました。

Dance Creation 

ダンス振付の制作現場にPCを設置し、OpenVINOがどのように認識するのかを実際に見ながら振付を制作しました。人間視点から「人以外の○○の様に見える」はAIから見てもそう見えるのかを即興で踊りながら検証していきました。

人間が椅子や象や犬に見えるポーズが物体認識でも同じように読み取られていたり、即興で踊る中で顔近くに指で作る四角形ポーズはスマートフォンと読み込むなど振付のヒントとなる要素を沢山見つける事ができました。

また人間の頭部にオレンジ色のニット帽を被せるて抱えるとAIでもスポーツボールとして読み込まれ、この着想によってCONDENSE初の頭部をバスケットボールに見立てる振付が生まれました。

制作現場ではOpenVINOの精度が高くダンサーは「Person」として識別されることが多くAIの認識精度の高さにおどきました。振付制作から「人のBIASとは何か」をAIと遊びながら行うことで普段ではたどり着くことのできない振付やポーズに行き着く事ができました。

 

System Design and WorkFlow

1.Work Flow

Open VINOから得た映像は検出した複数のセグメンテーションのマスクが1つの映像に集約されており、そのままではエフェクトを付けることが困難だったため、こちらで指定したラベルのみを識別する機能を開発しました。

合わせて、目的のセグメンテーションの内側か外側のどちらにエフェクトをかけるのかを簡単に切り替えられるようにしたり、解析文字や矩形・認識ラベルの有無を自由に選択できるようにしたりしたことで表現の幅がさらに広がりました。

実際のエフェクト制作は複数人で分担し、各々がGLSLシェーダやアルゴリズムをTouchDesigner上で構築してジェネレーティブなヴィジュアルを作り上げました。さらにそれらを1つのファイルにまとめてそれぞれテイストを確認しつつ、全体の方向性を決めていきました。

最終的には、Open VINOから直接書き出した映像とTouchDesignerでエフェクトをつけた映像とをコンポジットして本作品は制作されています。

 

Visual Creation 

Open VINOから出力された物体認識とセグメンテーションの情報をTouchDesignerに入力しリアルタイムにヴィジュアルエフェクトを構築していきました。

動的にOpenVINOから生成されるセグメンテーションのマスク映像は、従来の人の手で作成するマスクとは違い大量のオブジェクトを大量に認識し生成するため、よりダイナミックなマスク映像になっていることに注目し、エフェクトを制作、画面内を自由に装飾し、大胆にヴィジュアルを変化させるエフェクトを中心に、渋谷の街並みとスタイリッシュなデジタル観という世界観を構築していきました。

 

 

また、絵文字(emoji)を大胆に使用した表現をいくつも織り交ぜています。具体的には、Open VINOが検出した「Dog」のセグメンテーションに対してはオリジナルの「Dog」の絵文字のeffectがマスクを埋める用に表現されます。これらの絵文字の出し分けを自動化することによってスピーディに演出パターンを生成することを実現しました。絵文字を使ったエフェクト表現にも、単純に1つのセグメンテーションに対してシンボリックに1つの絵文字を見せるパターンや、密集した絵文字の群が音に合わせてがうねるような動きを見せたり、各々がノイズののった複雑な形状に変形したりするる物など、バリエーションを用意しました。さらにGLSLシェーダで書いたオールドスクールなVHS風のポストエフェクトをこの絵文字に対してかけることにより、より一層のデジタルテイスト感を強調しています。

Credit

【CAST】

・Toyotaka : https://www.instagram.com/toyotaka_bbb
・SHUN : https://www.instagram.com/shun_92
・GO UEKI : https://www.instagram.com/goueki
・RYO : https://www.instagram.com/ryoverflow
・gash! : https://www.instagram.com/gash1030
・SHINSUKE : https://www.instagram.com/shinsuke.bbb
・ZiNEZ a.k.a KAMIKAZE : https://www.instagram.com/zinez_kamikaze

【Music Producer】
・SNG

【AI Programming / Real Time Visual Effects】
-THINK AND SENSE-
・Shuhei Matsuyama / Ayaka Tanizaki / Okawara Ayato

【Video Director】
BUDDHA.INC.
http://buddha-108.com/

【Album Art Work】
TEMBA

【Hair make】
Kenji Takeshima

【Costume】
Hideaki Tatematsu

【Photographer】
Naoya Takebe / Narumi Takakura

【CAST Manager】
・Teruyuki Hayashi / Hyuma Kamiya / Kenichi Kurosaki

【Production】
・B3

【Production Manager】
Takayuki Inaba / Ikumi Kinoshita

【MV Concept Design】
Shuhei Matsuyama / Toyotaka

【Producer】
Toyotaka

【Executive producer】
Shigeki Inaba